家づくりラプソディー

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延床23坪の注文住宅を建てた経緯や暮らしの紹介。理屈っぽい話題多めです

なぜ注文住宅を建てることにしたか:(6)狭小住宅、実はみんな好きだろ

 前回の記事では、狭小で建てる注文住宅に活路を見出し始めたことを書きました。
 今回は、地元の工務店で相談したときの感想について書きます。
 
 自分に注文住宅なんて出来るのか…?
そう思いながら検討を始めました。
 
 まずは予算感から家の広さを概算。
 
 建売住宅を探していた時と同じ予算で注文住宅を実現しようとすると、
買えそうな土地は25~30坪(83~99㎡)程度
 
 私のエリアの住宅用地の区分上、延床面積は敷地面積の80%が上限とされているところがほとんどなので、
建物は延床20~24坪(66~79㎡)
で、なんとかしないといけません。
 
 1フロアあたり10~12坪。
 妻によると、「スミレアオイハウス」というお家に代表される「9坪ハウス」という有名な狭小住宅カテゴリーがあるとのこと。検索して写真を見ると、ワクワクする気持ちと同時に漠然とした不安に駆られ、不思議な汗が出てきます。
 
「おう、俺たち家族、こ、こういう家で暮らそうとしてるのか…?」
 それにしても、妻はなんだかんだで住宅建築にも詳しく、結婚時に実家から持ってきた書籍にも家づくりに関するものが沢山。
 マンションや建売を探していたのは私と意見が合っていたからだと思っていましたが、私が予算が~と気にしていたせいで、はじめから注文住宅の道を消して考えていたのは悪かったなあと反省。
 
 ともあれ。
 妻が方眼紙やトレーシングペーパーを広げて間取りの検討を始めます。
 
 あー狭いー
 きついー
 むりだー
 
 と悲痛な声を上げながら、明らかに楽しそうだよ君
 
 ちょっと自分も検討してみよう。図は描けないので数字から詰めてみる方法はどうか。
 
 必要になるであろう面積をざっくり書き出してみました。
 

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 うーん、これで既に22坪です。収納ゼロ、夫婦のプライベートスペース無し(笑)
 うわーまじかー確かにむりじゃないのかーと絶望しかけました。
(玄関1坪は贅沢だと言われるでしょう。とりあえず、の概算です)
 
 この面積概算の状態でそのまま作ると、ただの狭い家になります。
 そこでスミレアオイハウスに学べるように、玄関と階段を重ねたり、廊下を無くしたりして、ここからできるだけ居住空間を稼ぎ出していくのが狭小住宅の醍醐味なんだと思います。
 コスト的に言い換えると、1坪節約する工夫に50万円の費用がかかったとしても、土地の坪単価が50万円以上ならばペイできるということです。
 しかしこの時点では、自分には想像力があまりにも足りません。
 
 で、ここはプロを頼ってみようということで、地元の工務店の何社かに話を聞きに行くことに。
 
 詳しくはまた別の記事で書こうと思いますが、私は建築会社の選定にあたって、中~低価格帯のハウスメーカーと、地元の工務店の数社に初期プランを依頼しました。
 それぞれ相談したタイミングが異なるので、すべて同じ土地で条件を揃えて比較できたわけではありません。
 しかし、個人の趣味趣向にマッチするかどうかは別として、小さい土地を見せたときの反応が良いのは、圧倒的に地元の工務店でした。
 
 ハウスメーカーは設計スタッフと営業スタッフが分業されていますので、設計者がどういう思いでプランを描いているのか全く分かりません。
「なんだよこの土地狭すぎだろ、家買うのやめとけよ…」
とか思われているかもしれません。知らんけど。
 その土地・家・家族の組み合わせに、どういう姿、コンセプト、理屈を見出しているのかも分かりません。
 
 一方、地元の工務店は、社長さんやそれに近い立場の人がお客の相手をしてくれるので、この先の家づくりが全体的にどんな雰囲気になりそうか想像しやすい気がしました。
 「こんな土地を買おうかなと思ってるんですが…」とプリントやSUUMOの画面を見せると、みなさん前傾姿勢になってニヤニヤしながらあーだこーだ言い始めます(笑)
 というかこんなん狭小とは言わない、延床20坪切ってからが勝負、みたいな職人気質な気概すら感じることがあります。
(狭小に造詣の深い設計者なら上述の9坪ハウスはおそらく当然知っているのでしょうから、建坪9坪を前提として、総二階で延床18坪が狭小のスタートラインだろうという意識があるのかもしれません)
 
 あぁなるほど、設計者的には、狭小住宅はやりがいの塊なんだな、と思いました。
 厳しい制限の中でいかに豊かな空間を作り出すのか、という建築家的な文脈が漂うためかもしれません。
 もともと狭小に強そうな会社を選んだうえで話を聞きに行ったというのもありますけどね。
(逆に、「少なくとも26坪、望ましくは30坪建てたい」と最初から断ってくれた工務店さんもありました)
 
 ともかく、初期プランの段階からそんなに愛でられる家だったら、おそらくどんな家でもそれなりに大丈夫かもしれないと思えてきました。
たとえやっぱり狭すぎたとなっても、「うち狭いからさ~」とかなんとか言いながら、笑って暮らしてそうな気がしたのですアバタもエクボじゃないですけど。
 
 オーダーメイドの物を注文するとき、お客は基本的に素人ですから、商品に関わるすべての事柄を把握し判断できるわけではないと思います。
ということは、必ずどこかで「あとはお任せします」と仕事を託すフェーズが訪れるわけです。
注文住宅においては、その不安をどうやって補うか。
 
 年間数千~数万という販売戸数によって蓄積・更新されてゆく、膨大な施工事例やノウハウに裏付けられた安心感をブランドとして信じて購入するなら、大手のハウスメーカーがいいと思います。
 
 人柄、思想、会社のカラー。そういった要素にシンパシーを感じたいなら、地元の工務店とか設計事務所がいいかもしれませんね。